

与えても返ってこない。なんだか損している気がする
ビジネスや自己啓発の世界では「ギブ(与える)ことを続けなさい」「与えれば必ず返ってくる」とよく言われますね。
一般的にも因果応報という言葉があるように、良いことをすれば必ずかえってくるというイメージは少なからず共通するものがあると思います。
しかしこういった教えを実施した場合、現実にはギブばかりで疲れてしまったり、人間関係や職場で消耗してしまうことが少なくありません。
筆者自身も独立当初は「与えることが大事」と信じて行動し続け、結果的に心を病んでしまうほどに疲弊していました。
ですが、心理学や哲学の学び、そして実際の人間関係での経験を通じて、「疲れずに健全にギブする方法」 の本質的なコツを学びました。
この記事では
- ギブアンドテイクで疲れしまう原因
- ギブしたのに「返ってこない」と感じるときの心理的背景
- ギブを通じて人間関係でバランスを取る具体的な方法
などを解説していきます。
読み終える頃には、「無理なく与えながらも、自分も満たされる関係性」 などのテーマの考え方や実践できる具体的なヒントが得られるはずです。
目次
ギブアンドテイクで疲れてしまう要因

ギブアンドテイク本来の意味は与えることと受け取ることのバランスを前提にした考え方です。
『与えることが重要』とつい考えてしまいがちですが、そういった考えに固執すると現実には「ギブばかりで返ってこない」状況に陥り、疲れてしまう人が少なくありません。
ギブばかりで疲れる人の背景には、次のような共通した要因があります。
こうした要因はいずれも「与えること=自分を犠牲にすること」という誤解から生じやすいものです。
もし、あなたがギブをして「疲れる」「損している」と感じているなら、以下で解説するそれぞれの要因に当てはまっていないか確認してみてください。
無意識に過度な見返りを期待してしまう

このように思った経験はありませんか?
これは心理学でいう 『社会的交換理論』 に基づく自然な心理で、人は誰でも少なからず「与えたら返してほしい」と感じる傾向があります。
人間関係を「投資とリターンの交換」と捉える心理学の理論です。
相手に与えた労力や時間を「コスト」とみなし、見返りがあると「公平だ」と感じ、なければ「不公平だ」と感じます。
この「公平性への敏感さ」が、ギブで疲れてしまう心理の背景にあります。
ギブばかりで疲れてしまう人は、以下のような心理が強く表れやすいのが特徴です。
- 自分が与えた以上の見返りを期待する
- 見返りが早く返ってくること強く求めてしまう
- 見返りが少ない、もしくはないと落胆したり、怒りを感じてしまう
といった反応が多くおこります。
こうした反応は決して「心が狭いから」でもなく、「寛容性がない」わけでもありません。
むしろ、人間関係に誠実で、相手との公平さを大事にしている証拠でもあります。
ただし、この感覚にとらわれすぎると「返ってこない=自分は損している」と感じやすくなり、結果として疲弊してしまうのです。
大切なのは「見返りを期待しないこと」ではなく、「見返りがなくても自分の行動に納得できるかどうか」という視点に切り替えることです。
自分にとって希少なものも与えてしまう
自分にとって大切で限られた資源まで差し出してしまう人も、ギブアンドテイクで疲れてしまいやすい人の特徴です。
例えば
- 経済的に苦しい状況にあるのに誰かにご飯を奢ってしまう
- 予定が立て込んでいるのに突然の頼まれごとに対応してしまう
といったケースです。いわゆる「良い人」で終わってしまい、結果的に自分をすり減らしてしまいます。
心理学的には、これは 「自己犠牲」や「セルフネグレクト」 に近い状態です。
自分のニーズや健康よりも他人を優先してしまうことで、やがて「ギブばかりで疲れる」悪循環に陥ります。
自分の健康や生活をおろそかにしてまで他人を優先する行動を指す心理学用語です。
日常生活の質を下げてしまうため、結果的に長期的な人間関係にも悪影響を及ぼします。
大切なのは「何を与えるか」ではなく、「どこまでなら与えても自分を守れるか」という境界線 を持つことです。
これが健全なギブアンドテイクの第一歩となります。
テイカーばかりにギブしてしまう
「ギブばかりで返ってこない」と感じて疲れてしまう大きな原因の一つが、テイカーに過剰に与えてしまうことです。
テイカーとは、自分の利益だけを優先し、相手にお返しをする意識がほとんどない人のこと。
いわゆる「くれくれ君」と呼ばれるタイプです。
- 相手が困っているから
- 頼まれたら断れないから
- かわいそうだと同情してしまうから
といった理由で手を差し伸べ続けていると、結局は「搾取されるだけの関係」になってしまい、徒労感が強まります。
心理学的に見ると、これは 「境界線(バウンダリー)」をうまく引けない傾向 によるものです。
相手を助けたい気持ちそのものは素晴らしいですが、境界線を持たないとテイカーにとって「都合のいい人」になってしまい、自分をすり減らす原因になります。
バウンダリーとは、心理学やカウンセリングで使われる「心の境界線」を意味する言葉です。
このパターンに陥っているタイプはたとえば、
- 相手の要求にすべて応じるのではなく「ここまではOK、ここからはNO」と線を引くこと
- 自分の時間・感情・お金などを守るための基準を持つこと
これまで分け隔てなく、手を差し伸べている人にはこの考えは抵抗があるもしれません。
しかし、こうした線引きをすることで、相手との健全な距離感を保ち、消耗せずに本当に大切な人間関係に集中することができます。
大切なのは「誰にでもギブする」のではなく、信頼できる人・互いに成長できる人にギブを集中させることです。
そうすることで、与えることが単なる消耗ではなく、健全な人間関係へと変わっていきます。
ギブアンドテイクで疲弊しない為には

「ギブばかりで返ってこない」と感じて疲れてしまう状況から抜け出すには、与え方の工夫と心の持ち方 が大切です。
単に「与えるのをやめる」ことではなく、健全なギブを意識することで、人間関係や職場でも疲弊せずに続けることができます。
ポイントは次の3つです。
・ギブした相手からテイクしようとしない
・社会貢献したい分野やミッションを掲げる
これらは一見シンプルですが、心理学や哲学の観点からも「疲れないギブ」を実践するために欠かせない考え方です。
以下でそれぞれ解説していきます。
余裕があるものからギブする
ギブばかりで疲れてしまう人には、まず「自分にとって余裕のあるもの」から与える ことをおすすめしています。
自分に余裕があるものなんてあるのか?と思うかもしれませんが人が与えられるものはお金や物だけではありません。
- 感情的なギブ(優しく接する、相手を笑わせたり、元気にする)
- 能力的なギブ(専門知識を教える、相手の不得意な部分を補う)
- 労力的なギブ(相手の変わりに仕事や業務などをサポートする)
などのギブがあります。
こうした中で「自分が無理なく出せるもの」から提供するのが、疲弊しないギブの基本です。
例えば、
- 弁護士や税理士など専門家の知り合いがいる場合は、友人が困っているときに「この人なら信頼できる」と紹介してあげる
- 気持ちに余裕があるときに、職場の同僚や友人の悩みを30分だけじっくり聞いてあげる
- 自分が得意な分野(たとえばパソコン操作や資料作成)を、必要な場面でサッとサポートしてあげる
といった行動です。
これらは大きな犠牲を伴わず、むしろ自分の強みや余裕を活かす形で相手を助けられるため、疲弊せずに感謝を得やすい「健全なギブ」になります。
専門分野の人脈を紹介する、気持ちに余裕がある時に話を聞いてあげる、などがこれに当たります。
心理学には「自己効力感」という概念があります。
これは「自分には人の役に立てる力がある」という感覚のことで、この感覚が高まるほど人はエネルギーを消耗せずに行動できます。
余裕のある資源からギブすると、この自己効力感が高まり、与えることそのものが自分の充実感につながるのです。
無理をしてまでギブする必要はありません。
まずは「自分が与えても苦しくならないもの」から始めることが、長く続けられる健全なギブアンドテイクにつながります。
例えば、身近な人に「ありがとう」と感謝を一言伝えるだけでも立派なギブになります。
ギブした相手からテイクしようとしない
ギブした相手からテイクしない、つまり見返りを求めないということも疲弊しないコツです。
「これだけ与えたのだから、相手も返してくれるはず」と期待してしまうのは自然な心理です。
しかし期待が強すぎると「返ってこない=裏切られた」と感じてしまい、疲弊の原因になります。
大切なのは、「相手の行動」ではなく「自分の行動」にフォーカスすること です。
- 相手がどう反応するかはコントロールできない
- 自分がどう行動するかはコントロールできる
この視点に切り替えるだけで、ギブによるストレスは大きく減ります。
「返ってこなくても、自分が与えたいから与えた」と思えると、相手に振り回されずに済みます。
実践のコツは、ギブの基準を「相手にどうしてほしいか」ではなく、「自分が納得できるか」 で決めることです
例えば「今日は時間に余裕があるから手伝う」「相手の成長を応援したいから知識をシェアする」など、自分軸でギブを選ぶと、返ってこなくても疲れにくくなります。
ギブは別の形で返ってくる
実際、与えたものは必ずしも「与えた相手」から返ってくるとは限りません。
心理学でも「間接的互恵性」と呼ばれる考え方があり、他者に与えた行為が、思いもよらない第三者からの好意やチャンスにつながることは少なくありません。
心理学用語で「自分が誰かに与えた行為が、別の人から返ってくる現象」を指します。
ギブが直接その場で返ってこなくても、社会的なつながりを通じて巡り巡って自分に戻ってくるという考え方です。
「この人には返ってこなかったけど、別の人から大きなサポートを受けられた」
「職場では損をしたけど、別の場面で信頼や人脈が広がった」
といったように一時的には損をしたけどあとで振り返れば良い結果に繋がった体験はあると思います。
こうした経験を通じて気づくのは、ギブは直線的なお返しではなく、巡り巡って自分に戻ってくるということです。
この視点を持つと、「返ってこないから損をした」という発想から解放され、長期的に健全なギブを続けられるようになります。
社会貢献したい分野やミッションを掲げる
疲弊しないギブを続けるためには、「なぜ自分は与えたいのか」という軸(ミッション) を持つことが大切です。
単なる「良い人だから与える」ではなく、自分の価値観や人生経験に基づいた目的を持つと、与えることが自己犠牲ではなく自己表現に変わります。
例えば
- 学生時代に孤独を感じた人が「今の学生をサポートしたい」と考える
- 過去に病気で苦しんだ経験を持つ人が「同じ病を抱える人の力になりたい」と思う
- 職場でのストレス経験をもとに「働く人の心の健康を支えたい」と感じる
こうした「自分の経験とつながるテーマ」が、自然と長期的なモチベーションになります。
ミッションは社会全体を変えるような壮大なことではなくても構いません。
「家庭の中で安心感を与えたい」「身近な人の役に立ちたい」といった小さな範囲でも、立派なミッションです。
ミッションを掲げることで、ギブの基準が「相手にどう思われるか」ではなく、「自分の人生の目的に合っているか」 に切り替わります。
その結果、返ってこなくても満たされ、疲弊せずに続けられるようになります。
著者の体験談
私自身も、人生の中で家族との死別、引きこもり、大きな借金、社会的・経済的な孤立などを経験しました。
そうした苦しい時期を経て、「同じように人生の転換期に立つ人に寄り添える存在になりたい」と思い、現在はその想いをミッションに活動しています。
実際に似た境遇の方をサポートしていると、「ただ与えているはずなのに、自分自身が充実している」 感覚を強く感じます。
過去の自分を肯定できるようになり、まるで当時の自分が癒されているような感覚さえあります。
このように、ミッションを持つことでギブは単なる行為ではなく、自分を癒し、人生に意味を与える体験 に変わります。
まとめ|疲れないギブで人間関係を健全に
本記事では「ギブばかりで疲れてしまう原因」と「健全にギブを続けるための考え方・方法」を解説しました。
ポイントを振り返ると、
- 疲れる原因:過度な見返りの期待、希少な資源のギブ、テイカーへの過剰なギブ
- 疲れないギブの実践法:余裕あるものから与える、自分軸で行動する、ミッションを持つ
- 心理学の視点:社会的交換理論、セルフネグレクト、バウンダリー、間接的互恵性など
ギブアンドテイクは「与える=自己犠牲」ではなく、「与える=自己表現・自己実現」 であると捉えることで、関係性は大きく変わります。
そして大切なのは、「返ってこなくても損ではない」「別の形で返ってくる」という視点です。
この視点を持つことで、あなたのギブは長期的に満たされる人間関係へとつながっていきます。




