NLPを学ぼうと思った時、最初の基本的テクニックとして学ぶことが多いのがアンカリングです。
アンカリングとは、ある特定の刺激をきっかけとして、自分が意図した精神状態を引き出すテクニックのことです。
アンカリングをおこなうことによって、自分の精神状態をコントロールし、いつでも最高のパフォーマンスを発揮することが出来ます。
そこで本記事では
- アンカリングの概要、解説
- アンカリングの効果
- アンカリングのやり方
などについて解説していきます。
目次
アンカリングとは
アンカリングとは冒頭で述べたようにある特定の刺激をきっかけとして、自分が意図した精神状態を引き出すテクニックのことです。
ここでいう特定の刺激とは主に『五感を通して脳に送られる情報』です。
そしてその情報をきっかけとして脳が特定の反応を示すことを意図しておこないます。
例えば、学生時代に流行っていたヒットソングを聴くと、なにも意識していないのに学生時代の記憶や感情など臨場感をもって思い出します。
これは音楽という聴覚情報の刺激が条件反射となって学生時代の記憶と懐かしい気持ちが引き出されています。
他にも恋愛の思い出の場所に訪れた時に、切ない気持ちになったり、お袋の味の料理に似た匂いを嗅ぐと実家や故郷が懐かしくなったりするなどしますよね。
このように、人間の脳は特定の情報に対して、特定の反応をする仕組みがあります。
アンカリングはこの人間の心理的条件反射の仕組みを意図的に利用したものです。
アンカリングの語源はアンカー(船のいかり)から派生した言葉です。
船がいかりをおろし、港など特定の場所に繋ぎ止めておくように、特定の心理状態と繋ぎ止めておくという意味があります。
そして、アンカリングによって特定の心理状態を引き出すきっかけとなる刺激のことを、『トリガー』といいます。
先ほどの、学生時代の例でいえば『学生時代に流行っていた音楽』という聴覚情報がトリガーとなっていたわけです。
アンカリングによってどのような効果が得られるのか?
アンカリングをおこなうことによって
・気持ちの切り替え
・土壇場での集中力
・自信ややる気
などを引き出すことが出来ます。
つまり、自分が意図した精神状態を引き出すことが可能になるわけです。
勝負事や土壇場の時、スランプが続き自信や平常心を取り戻したい時、気持ちのオンオフを切り替えたい時などさまざまな場面でアンカリングは活用できます。
一流のスポーツ選手やパフォーマーなど第一線で活躍する人ほど、独自のアンカーを持っています。
野球選手の打者であれば打席に入り、バッティングフォームを通してアンカリングをおこなっています。
これは、打席に入り、特定の動作をする(バッティングフォーム)というトリガーがきっかけとなって、高速で飛んでくるボールを捉える集中力や精神的安定感を引き出す意図もあるわけです。
サッカーなどのチームでおこなうスポーツは試合前にチームで円陣を組み、肩を組みながら掛け声をおこなうシーンも見られます。
これは、チームの気持ちや足並みを揃え、チームの一体感を引き出す目的でおこなうアンカリングでもあるわけです。
アンカリングのやり方
アンカリングは以下のステップでおこないます。
- 意図して引き出したい特定の心理状態を決める
- 記憶を通して、意図した心理状態を引き出す
- 体験を思い出し、気持ちがピークになる直前にアンカーを埋める
- うまくアンカーが入ったか確かめる
それぞれ解説していきます。
1・意図して引き出したい特定の心理状態を決める
まず、自分が意図して引き出したい心理状態を決めます。
- 自信
- 集中力
- やる気、モチベーション
- 安心感、安定感
などなど、自分が求めるポジティブな心理状態を決めます。
例えば、仕事で重要なプレゼンの前にはやる気や自信を引き出すアンカリングをおこなったりします。
2・記憶を通して、意図した心理状態を引き出す
意図して引き出したい心理状態を決めたら、次はアンカーを埋め込む準備段階です。
まず過去の体験のなかで最も、求めている心理状態に近い状態にあったシーンを設定します。
求めている心理状態が『自信に満ち溢れている状態』であるなら今までの人生で最も自信に満ち溢れていたシーンを思い浮かべるのです。
なにかで一番になった体験とか、大きな大会で優勝したこととか、影響力のある人に褒められた体験など、大きな自信を感じられたシーンをひとつ選びます。
選ぶ時に重要なポイントは『求めている感覚が最も感じられたシーン』であることです。
例えば、小さい頃にテストで100点とって親に褒められて自信を感じた体験があるとします。
この体験は大人になって振り返ってみると取るに足りない、大したことない体験かと思うかもしれません。
しかし、この体験をした当時の自分が相当な自信を感じていたならそれがベストなシーンとなります。
したがって頭で考える客観的なイメージではなく、体験をした当時の主観的な感覚を思い出すことによってアンカリングにベストなシーンを選ぶことが出来ます。
3・アンカーを決める
アンカリングにベストなシーンを決めたら次は心理状態を引き出すきっかけとなるアンカーを決めます。
アンカーは求める心理状態を引き出すトリガーを設定する条件づけのようなものです。
アンカーは大きく分けて
- 視覚的トリガーとなるアンカー
- 聴覚的トリガーとなるアンカー
- 感覚的トリガーとなるアンカー
の3つあります。
視覚は写真や映像や特定の場所の景色、聴覚は特定の音楽や音、リズムなどがアンカーとして埋め込むことが出来ますが、個人でおこなうとなるとこれらのアンカーは埋め込みにくいです。
だから大抵の場合、身体感覚をつかったアンカーを埋め込みます。
身体感覚は特定の動作や特定の身体部位への刺激など、個人で簡単に埋め込むことが出来ます。
例えば、
- 右手の親指と薬指をくっつけて輪をつくる
- 特定のポーズを取る
- 特定の場所に触ったり、摘んだりするなど身体の特定の箇所に刺激を与える
など簡単な動作でアンカーを設定することが出来ます。
ポイントは普段しない動作、刺激であると同時にどのような状況でも簡単におこなえることであるということです。
この時、普段の生活でおこなわない動作であることが重要です。
4・体験を思い出し、気持ちがピークになる直前にアンカーを埋める
求める心理状態に最も近い体験を選び、アンカーも設定したら次はいよいよアンカーを埋める段階に入ります。
アンカーを埋めるにあたっては
- 目を閉じ、イメージを通しながら過去の体験を再体験する
- 体験を追従するなかで気持ちがピークになる直前にアンカーを埋める
という2段階があります。
アンカーを埋め込む際は意識が散漫にならないように、できるだけ静かで落ち着いた環境でおこないます。
目を閉じ、イメージを通しながら過去の体験を再体験する
まず、目を閉じながらイメージを通して過去に自分が求めている心理状態を得られた体験を追従体験します。
体験をする時は、まるで当時の自分に戻ったかのように臨場感を持ってイメージすることが大切です。
まるでビデオを再生するように当時の状況をイメージのなかで再現します。
- どこにいたか?
- 誰といたか?
- 何が見えていたか?
- 何が聞こえていたか?
- 何を感じていたか?
などなど五感を通して、感じていこと、認識していたことを再現します。
体験を追従するなかで気持ちがピークになる直前にアンカーを埋める
当時の体験を臨場感を持ってイメージできるようになったら、いよいよアンカーを埋め込みます。
体験を追従するなかで最も気持ちがピークになる直前にアンカーを埋め込むのです。
例あげると
- 求める心理状態は『自信』
- 過去に最も自信を感じた体験はテストで100点をとった体験
- アンカーは拳を強く握り込む動作
といった設定でアンカーを埋め込むとします。
まず、イメージの中でテストで100点を取り、最も自信を感じた体験を追従します。
最も自信を感じた瞬間がテストの答案を見た瞬間であるのなら、ビデオを巻き戻すようにその少し前のシーンから体験をおいます。
イメージを追従していくうちにやがて自信がピークになるテストの答案をみる瞬間が訪れます。
この例でいうなら、まさに答案をみる瞬間に実際にアンカーである拳を強く握り込む動作をするのです。
ピークを超えたら、ゆっくりと現実に戻ってくるようにイメージングをやめて、目を開けます。
5・うまくアンカーが入ったか確かめる
アンカーを埋め込むことが出来たら、実際にアンカリングが出来ているか確認します。
先ほどの例でいうのであれば、拳を強く握り込む動作をすれば、まるでスイッチが押されたかのように自信が湧いてくるということが起きます。
もし、時に心理状態の変化がなかったり、心理状態の変化が弱かったら、アンカーをうまく埋め込めなかった可能性があるので、もう一度イメージを通してアンカーを埋め込む作業をします。