近年のビジネスシーンなどにおいて『ウィンウィンの関係を目指す』などと聞いたことはないでしょうか。
ウィンウィンとは英語の『win』(勝利)を2回繰り返した造語です。
つまり、自分と相手にとってお互いに勝利となる関係性を築きあげることを『ウィンウィンの関係』と呼びます。
要は『お互いに気持ちの良い関係性』を目指すということなのですが言葉にするほど『ウィンウィンの関係を築くことは容易ではありません。
ウィンウィンの定義が曖昧になったまま中途半端な関係性を築いている人が大半だからです。
そこで本記事では
- ウィンウィンの関係性の定義
- ウィンウィンの関係性の築き方とコツ
などを紹介していきます。
目次
ウィンウィン(win-win)の関係とは
『ウィンウィンの関係』とは冒頭でお伝えしたようにお互いに利益や得を築き上げられる関係性のことです。
『ウィンウィンの関係』は世界中で大ベストセラーになった『七つの習慣』の中で、著者である『スティーブン・R・コヴィー 』博士が紹介したことで有名になりました。
スティーブン・R・コヴィー 博士
ウィンウィンはビジネススキルやコミュニケーション術の類ではなく、人間関係における姿勢、在り方です。
Win-Winは、全ての人間関係において、必ずお互いの利益になる結果を見つけようとする考え方と姿勢である。
何かを決めるときも、問題を解決するときも、お互いの利益になり、お互いに満足できる結果を目指すことである『完訳 7つの習慣 人格主義の回復 第4の習慣 Win-Winを考える』より
ウィンウィンの関係性の例
例えば『お金を持っているけど喉が乾いたAさん』と『水を持っているけどお金に困っているBさん』がいたとします。
Aさんの望んでいることは『水を飲んで喉を潤すこと』です。
Bさんの望んでいることは『貧しさを解消すること』ことです。
もしこの2人が出会ったら、お互いのニーズを解消することが出来ます。
Aさんはお金を渡す対価として水を受け取り、喉を潤すことが出来ます。
Bさんは水をAさんに渡す対価としてお金を受け取り、貧しさを解消することが出来ます。
さらに、この取引をきっかけにAさんとBさんは定期的にお互いの必要としてしているものを交換し、両者の生活水準は大きく上がりました。
結果、『お互いに気持ちの良い関係性』となったことからウィンウィンの関係を築いたといえます。
上記は簡潔な一例ですが、急速に発展する関係性において必ずウィンウィンの関係があります。
お互いに関係を持てば持つほど文字通り、『勝利の結果』が多く築けるからです。
ウィンウィン以外の関係性
スティーブン・R・コヴィー博士は『人間関係の6つのパラダイム(見方、考え方)』として以下の6つをあげています。
Win-Win: 自分も勝ち、相手も勝つ
Win-Lose: 自分が勝ち、相手は負ける
Lose-Win: 自分が負けて、相手が勝つ
Lose-Lose: 自分も負けて、相手も負ける
Win: 自分が勝つ(自分だけが勝てばよいという考え方)
Win-Win or No Deal :自分も勝ち、相手も勝つ、それが無理なら取り引きしないことに合意する『完訳 7つの習慣 人格主義の回復 第4の習慣 Win-Winを考える』より
どのような人間関係も上記のいずれかに当てはまります。
では6つのうち、『どの関係性がベストか』と考える人は多いと思います。
やはり、何事においてもウィンウィンの関係性を目指すべきではないかと考えるかもしれません。
しかし、スティーブン・R・コヴィー博士は『状況によってベストな関係性は異なる』と解説しています。
例えば、勝負事の世界では仕組み上、お互いにウィンウィンの関係性を築くことは難しいわけです。
仮に自分がロスとなる結果となったとしてもその失敗から次への成功へと繋がる考え方もあります。
緊急性が高い差し迫った状況などではどうしても相手の勝利まで気遣う余裕がない時もあるでしょう。
このようにどの関係性がベストなのかは状況によって異なります。
ウィンウィンの関係で失敗する人の特徴
ウィンウィンの関係を築こうと目指す人は多くなっていますが同時に本当の意味でのウィンウィンの関係を築けていない人は多くいます。
例えば以下のような人です。
・自分のニーズを明確化していない
・詳細な協議をおこなわない
それぞれ解説していきます。
相手の欲求やニーズに関心がない
人間関係において相手の欲求やニーズに関心がない人は多くいます。
自分のニーズはしっかり話すけど、相手のニーズはどこか深い関心が持てない人です。
基本的に人が興味があるのは『自分に関連すること』です。
本能的に人は
- 自分の欲求を満たせるか
- 自分の安全を確保できるか
という2点を重点的に考える傾向があります。
6つのパラダイムでいう『Win』自分だけが勝てばいい、生き残ればいいという観点が根強いのです。
この観点のまま人間関係を築く人は相手のニーズに心からの関心を持つことが難しく、ウィンウィンの関係を築くことが難しく感じます。
自分のニーズを明確化していない
自分のニーズをはっきりと明確化していないとウィンウィンの関係性を築くことが困難です。
先述したようにウィンウィンの関係を築くにはお互いのニーズを満たす前提で動かなければなりません。
しかし、自分のニーズを明確化していないと、本当に望んでいる結果を相手に理解してもらえず、相手が自分の為に動いてくれても結果的に満足のいかない結果になることがあります。
例えば、自分がビジネスをしていたとして『集客』に悩んでいるとします。
ビジネスパートナーに『集客』に悩んでいることを伝えると、ビジネスパートナーはウィンウィン関係性を築こうとお客さんを紹介してくれるようになりました。
しかし、『お客さんを紹介してもらうこと』は本当に望んでいることなのかは疑問が残ります。
本当は集客方法を学びたかったかもしれませんし、営業やマーケティングに強いビジネスパートナーを探していたのかもしれないのです。
このように『自分が本当に望んでいるニーズ』と『相手の貢献』がズレていると本当のウィンウィンの関係とはいえませんよね。
したがってしっかり、自分のニーズを整理し、相手に伝える必要があります。
詳細な協議をおこなわない
ウィンウィンの関係性を築くには必ずある程度の話し合いや議論は必要です。
もし、議論をしていないとお互いのニーズについて深い理解が得られず、納得のいく結果が得られずに終わる可能性が高くなります。
いちばん避けたいことはいきなりニーズ(結果)だけを話しあって手っ取り早く行動に取り掛かることです。
これだと『相手がなぜその結果を望んでいるか』の背景が掴めずに、機械的な対応になってしまいます。
良いウィンウィンの関係性を作るコツ
良好なウィンウィンの関係を作り出すコツは以下の3つです。
・関わる人には綿密な協議をおこなうこと
・お互いの価値観を明確にすること
対価や成果より、誠実さや思いやりを重視すること
本当のウィンウィンの関係を築きたいのであれば対価や成果を忘れ、自他共に思いやりと誠実さの心を持たなければなりません。
ビジネス上でウィンウィンの関係を目指すとなると『相互利益』という言葉を使いがちですが、利益に重視してしまうと本質的には利益にフォーカスしています。
それは自分が利益をとるために建前としてウィンウィンという言葉を使っているにすぎません。
スティーブン・R・コヴィー博士も言っているように、本当の成功は健全な人格のうえで成り立っているのです。
誠実さや思いやりの心があれば少なくともビジネスにおいても大切な信頼が築けます。
そして信頼のある関係であれば長い間、両者にとって精神的にも、物質的にも満たされた成功へと続くはずです。
関わる人には綿密な協議をおこなうこと
ウィンウィンの関係を築くにあたって大切なことは関わる人全てと綿密な協議をすることです。
ウィンウィンの関係と聞くと、一対一の関係性と思いがちですが関係者を全て含んでのウィンウィンの関係なのです。
このように関係者全員がウィンウィンを目指す考え方をオールウィン(All Win)といいます。
しかし、大事な話ほど当事者同士だけで決めがちです。
例えば『子供の将来の進路について親同士だけで決める』とか、『組織の重要な決定事項を上層部だけで決める』とかです。
つまり、この時に協議に参加できなかった関係者は疎外された形になり、かつ強制的にLose(自分が負ける)という形になってしまうことが多いです。
大規模な組織であればオールウィンの考え方は難しいと思うかもしれません。
しかし、それは間違いです。
常に組織内に関わる人たちのことを思いやりつつ、定期的に方針や社則などを見直しているとウィンウィンの形を維持することも可能だからです。
ウィンウィンが難しいと考えるのは『ウィンウィン以外の関係性に慣れてしまった人』です。
とりわけ、Win(自分がだけが勝つ)やWin-Lose(自分が勝ち、相手は負ける)の関係性で人間関係を築いてきた人にとってウィンウィンの関係性を築いていくことは大きな難題になります。
お互いの価値観を明確にすること
最後に大切なことは互いの価値観を明確にすることです。
というのも人はしっかり意識していないと自分の価値観で物事を判断するからです。
価値観を明確にしていないと『相手が望んでいるものはきっとこういうものだろう』と先入観を持ってしまったり、同時に相手からは不満やフラストレーションを感じさせることにもなりかねません。
したがって相手が大切にしていることは考慮すべきです。
とりわけ
- 信念
- 目指しているヴィジョン
- 規律
などはお互いしっかりシェアしておくことでストレスのないウィンウィンの関係性を築くことができます。